Story

女性創業人の陶華碧さんは1945年に中国貴州省遵義県で生まれ、貧困のため、学校に通えず、幼少期から掃除炊事などの家事手伝をし、小さい兄弟の面倒も見ながら育った。

二十歳の時、地質調査員のご主人と結婚し、二人の男の子に恵まれたが、わずか数年でご主人が病死した。途方に暮れて行商を始めたが、荷物が多いため市場に行くバスにしばしば乗せてもらえなかった。そのときの話をすると、陶さんが今でも涙をぐむ。

行商で少しお金をためた頃、拾った廃材のレンガなどで、小さな屋台を作り、米豆腐という貴陽伝統の軽食を売って生計を立てていた。庶民的な安い食べ物なので、下宿生活の学生が大勢足を運んでいた。親元を離れている学生たちを励まし、生活面もよく面倒を見ていたため、陶さんは次第に老干媽(おふくろさん)と呼ばれるようになった。

お店は道路に面しているので商売は繁盛した。特に陶さんお手製のテーブル調味料:具入りラー油を持ち帰り用として注文するトラックの運転手も日々増えてゆき、貴州省以外にもどんどん広められて行った。

一方、メインメニュの米豆腐は注目されなかった。陶さんはそこで始めて自家製の具入りラー油の魅力に気づき、いっその事、唐辛子の調味料だけ売ればよいではないかと42歳のとき彼女自身にとって大きな経営転換を決意する。

「老干媽」と名づけて商品化した当初は、無名のため売れなかった。従業員も少ない中、陶さん自ら無償で市販商品として企業の食堂や生活雑貨店に持ち込んだところ、すぐに本注文が舞い込んだ。このようにコツコツ販売ルートを拡大していくうちに、口コミによる「老干媽」の一大ブームとなり、調味料として認知度も高まり定着していった。

創業以来23年間、宣伝、融資、上場などの現代経営手法を一切使わず、味一本で勝負してきた。企業は年々成長し、現在は1日200万本の商品が、冷めない内に待ち並ぶトラックに積まれ、中国各地そして世界50カ国に向けて出荷され、年間売上げ700億円を超え大事業となっている。陶さんはおんなの細腕でチャイニーズドリームを掴み、多くの中国人に尊敬される成功者となっている。そしておふくろの味老干媽ラー油も世界中にファンを増やし続けている。